「医療職」の枠にとらわれない
働き方の幅広さ。
海外事業に携わり経験を積みながら、
リハビリの技術を高めていきたい

北原リハビリテーション病院 理学療法士

堀川 将太 さん

Profile
島根県出雲市出身、本学2019年卒。東京都八王子市の回復期病院である北原リハビリテーション病院に勤務し、理学療法士としてリハビリ業務を行うかたわら外国人研修生の受け入れや学生向けの海外スタディツアーの企画など、さまざまな海外プロジェクトに携わっている。

現在のお仕事について教えてください。

理学療法士として回復期のリハビリに携わりながら、病院内のさまざまな事業展開の中で海外プロジェクトを中心とした事業に積極的に関わっています。当院を運営している医療法人はカンボジアに日本人療法士が駐在している病院を建設・運営しているほか、ラオスやベトナムなどの国に技術協力を行っています。私は日々の業務の中で、そうした海外のスタッフとこちらの病院の海外事業部と協力して事業を進めているほか、現地で働く理学療法士がこちらにきて研修を行う受け入れやサポート等に関わっています。
また、当院では日本で看護を学ぶ大学生を対象としたカンボジアでのスタディツアーを定期的に開催しているのですが、今年度はその立ち上げから企画、実施までに携わらせていただいています。病院見学をはじめとしてその国ならではの歴史や文化に関わる施設にも訪れるほか、孤児院やその食事をつくっている現場で、現地の栄養のことについて学んでもらえるようなプログラムを組み、今準備を進めているところです。

積極的にさまざまな事業に関われる環境なんですね。

そうですね。病院内の医師や看護師、受付スタッフの中にも海外事業に関わっている方は多いですし、一般的に想像される「医療職」という枠にとらわれていない働き方だと感じています。1日の流れとしては朝、出勤してから夕方まで入院されている患者さんのリハビリを行い、リハビリ業務終了後や合間の時間を利用してさまざまなプロジェクトに関する業務を進めています。その中で週に1~2回は、入院患者さんの食事の際に配膳などを行うレストラン業務もあります。また、リハビリスタッフがグループ内の病院の行き来もあり、月に1、2回ほど急性期病院で当直を担当する機会もあるほか、外来専門のクリニックでリハビリを行うこともあります。
当院ではトップである理事長との距離が近く、一緒に食事をさせていただく機会もあります。今の日本社会や医療の問題などといった理事長の考えを直接聞くことができ、自分の考えや想いも聞いていただけるので、それが大きな学びになりますし、モチベーションを高めることができる環境で働けていると思います。

堀川さんが北原リハビリテーション病院に就職したきっかけは何ですか。

在学時に進路選択で迷っている際、ある先生からこちらの病院を勧めていただいたことがきっかけです。10か所以上の中国地方の病院を見学していましたが、やはり働き方の幅が違うということが一番の決め手でした。
海外事業のほかにも病院として東北の復興支援や八王子市のまちづくりプロジェクトを進めていたり、「癒しの空間づくり」のコンセプトの下で病院内に温泉を設置したり、動物を飼育してセラピーを試みていたりと、本当に多様な取り組みをされている病院でしたので、「ここで働く中で、自分のやりたいことを見つけられるのではないか」とかんじました。
そうして実際に就職し、日が浅いうちから海外の研修生と関わる中で日本と外国の文化の違いを知り、国際交流に興味を抱いたことで海外事業に積極的に取り組むようになりました。

海外研修生の受け入れには、どのように関わっているのですか。

今は主にラオスやベトナム、カンボジアなどの病院からリハビリスタッフの研修生が来ています。基本的に1~3か月の期間で、臨床現場を見学してリハビリの方法や患者さんとのコミュニケーションのとり方を学んでいただきます。特に、外国にはない日本人独特の心づかいや親切さの部分を知ってもらいたいと思っています。研修全体を通して、日々の報告書の書き方やパワーポイントなどの資料作成についてもサポートします。
研修生との関わりの中で、日本と海外の疾患の違いを感じることもあります。当院は脳卒中を専門しているので、単純な骨折のような機能面の障がいのほかにも「高次脳機能障がい」といって脳が受けたダメージによって記憶力や注意力に障がいが起こるケースも多く見られます。高齢化の側面もあり、こうしたリハビリについては日本の方が海外よりも進んでいるようです。一方、ベトナムでは通勤手段としてバイクを使う人口が多いため、バイク事故による頭部外傷のケースが多い傾向にあります。そのため、比較的若い年齢層のリハビリに関わる機会が多いという特徴があり、このような文化や生活スタイルによる疾患の違いというのは、とても興味深いです。

コミュニケーションはどのようにとられているのですか。

基本的に英語で会話をしていますが、お互いに母国語ではないので、長く具体的な例を交えた会話をしようとするとなかなかうまく伝えることができません。やり取りを重ねる中で、伝えたいこと短く、コンパクトにまとめるコミュニケーションのとり方を学びました。学生時代には英語を使うことを意識して勉強してこなかったので、病院に勤務し出してから動画サイトや研修生との関わりの中で、独学で学んでいきました。

島リハでの学びや経験は、お仕事にどのように活かされていますか?

学院では、学生が主体となって文化祭やさまざまなイベントの企画・運営を行う機会が多くあります。私は在学時、その中心となる学生自治会の副会長を務めていました。その経験を通じて、学生同士や先生方とはもちろんのこと、外部の関係者の方々と連絡・調整を行うことも多く、自分たちで考え、試行錯誤しながらイベント運営を行う中でコミュニケーション能力やプロジェクトを管理するマネジメント能力を身につけることができたと思います。

どんな時にやりがいや手ごたえを感じますか?

リハビリを通じて身体の機能が回復し、患者さんやそのご家族が笑顔になっていく瞬間に立ち会い、実際に感謝の言葉をいただくことで「役に立つことができた」という喜びを感じています。退院後、患者さんのその後の生活の様子を伺うために電話をかけさせていただくことがあるのですが、そこで「リハビリのおかげで、うまく生活できています」といった声をかけていただけることがとても嬉しいです。
一方、海外事業に携わる上では、どのプロジェクトも日々、新たなことへの挑戦なのでコミュニケーションの面や、医学的な知識・技術以外のところでも難しさを感じることが多いです。その中で自分なりの最善を尽くし、プロジェクトが成功したときの嬉しさははかり知れず、やりがいを感じています。

これから、どんな療法士をめざしていきたいですか。

まずは何よりも理学療法士としての経験を積み、より臨床的なリハビリの知識・技術を磨いていきたいです。それを踏まえた上で、働き方が無限にあるのが当院の最大の魅力ですので、今携わっている海外の事業や病院・八王子市というまちの雰囲気づくりにも関わっていけたらと思っています。
海外事業については、病院としてはアジアや中東などのさまざまな国から技術協力や新規プロジェクトの声がかかっている状況で、「関わりたい」と希望を出せば、実際に携われる可能性があります。私としては、今はどちらかというと長期的な海外赴任よりも、今回のカンボジアでのスタディツアーや学会への参加などの機会を利用して、短期的な出張で海外経験を積んでいきたいと思っています。

最後に、療法士を目指す方に向けてメッセージをお願いします。

私は、学生の頃から漠然と抱いていた「人の役に立つ仕事に就きたい」という想いが、「リハビリを通じて、ご本人やその周囲の方々を幸せにしたい」という夢に結びついたことで理学療法士を志すようになりました。今、将来の進路選択で思い悩んでいる皆さんも、どんなことでもいいので、何かひとつ自分のしたいこと・なりたいものを見つけてください。それが自分の信念となり、希望にかなう将来に進んでいくことができるのではないかと思います。

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