患者さんのやりたい作業が
リハビリになるって面白い。
退院後の生活を想像し、
その方に合うアプローチを探究する。

出雲医療生活協同組合 出雲市民病院 リハビリテーション科 作業療法士

板倉 和南 さん

Profile
島根県出雲市出身、本学令和元年度卒。急性期病院と在宅医療の橋渡しとしての大事な役割も担う、出雲市の出雲市民病院に勤務し、主に回復期の患者さんのリハビリを担当している。

現在の仕事について教えてください。

午前中は外来に通院されている患者さんを、午後は入院患者さんのリハビリを担当しています。
医師や看護師など他の職種のスタッフと話し合いをするカンファレンスへの参加も大切な仕事です。カンファレンスでは、患者さんの情報を共有したり、退院に向けての方向性を話し合ったりします。また、患者さんに対する支援をより良くするための「業務改善プロジェクト」では、看護スタッフなどと協力し、課題解決に向けて取り組んだりもしています。

作業療法士は、どんなリハビリをするのですか?

外来で初めてリハビリを受けられる方には、まず検査を行います。疾患やケガの内容にもよりますが、関節をどのくらい動かせるのか確認し、痛みや腫れの程度、熱さ・冷たさ・触られていることが分かるかといった感覚の状態を調べていきます。例えば、手にケガや障害をおった患者さんには、ペグボードをはじめとするさまざまな道具を用いて手の運動を行うことが多いのですが、職業や趣味、生活様式、困っていることなどをお聞きし、個人に合わせたリハビリのプログラムを考えて実施します。
入院患者さんの場合は、認知症の方を担当することも多く、パズルやプリントを使った脳トレなども実施します。寝てばかりではなく、入院生活の中にも楽しみを持っていただけるよう、その方の好きな作業を取り入れることが脳にも良い刺激になると考えています。

やりがいはどんなところですか?

はじめは暗い表情だった患者さんが、リハビリをすることで活気が出てきたり、意欲の変化が見られたりするところがやりがいですね。以前、腰の圧迫骨折で入院されたある患者さんを担当していました。痛みや不安感が強く、最初は歩行訓練などに消極的だったのですが、その患者さんのリハビリメニューに計算問題のプリントや塗り絵を取り入れてみたところ、そういった作業療法を好まれて、自分から積極的に「リハビリしに行きましょう」と言われるようになったんです。最初はベッドから離れることさえも不安だった方が、自分から動こうと頑張っておられる姿には私たちスタッフも励まされますね。

難しいと感じることはありますか?

認知症の方や脳の病気をされた患者さんは、こちらの説明が伝わりにくいことがあります。同じ疾患でも人によって段階や症状がさまざまです。紙に説明を書いて貼っておけば、作業の途中で分からなくなったとしても、紙を見て作業に戻ることができる方もおられますし、声かけをこまめにした方が進んで取り組める方もおられます。その患者さんが理解しやすいのはどんな方法なのか、どうアプローチしたらリハビリに意欲が出るのか、といったことを日々試行錯誤しています。

困った時は誰に相談していますか?

新人の頃は相談係の先輩がついてくださるので、分からないことがある時はその先輩に教えてもらうことが多かったです。私がいる作業療法部門には、色んな分野のスペシャリストがいるんですよ。例えば手のリハビリに詳しい先輩であったり、呼吸器や循環器といった内科疾患に関するリハビリが得意な先輩であったり……。もちろん自分でも調べますが、この人に聞けば解決できそう!という先輩がいてくださることは、とても頼りになります。
あとは、シマリハ時代の同級生や学校の先生に相談することもあります。守秘義務があるので、患者さんの名前や個人が特定されるようなことは話しませんが、相談をすることで自分が思いつかなかった作業療法のアイデアや、色々な意見がもらえるので勉強になります。

卒業後もシマリハの先生と交流があるんですね!

卒業後に一緒に食事に行く機会をいただきました。自分のリハビリについて少し自信が持てていなかったのですが、私の話を聞いてくださり「それで良いわよ」と、全て肯定してくださいました。ホッとしましたね。もともと、私がシマリハを選んだのは、学生と先生の距離が近くて、雰囲気が良いなと思ったからなんです。入学前に感じたシマリハの和気あいあいとした校風は、本当にイメージ通りだったと感じています。

シマリハでの思い出を教えてください。

奥出雲町は雪が多くて、友達とかまくらを作った思い出があります! 私のクラスは10人ほどだったので、人数が少ない分、皆んなで助け合ったことが多かったように思います。長い臨床実習の間も同級生と意見交換をしたり、一緒に食事に行ったりして励まし合いながら乗り越えました。学習面では、実際の患者さんを想定してリハビリのプログラムを考える授業があり、今の仕事に生かされていると感じます。授業で習ったのと全く同じ症例の患者さんと出会うことはなかなかありませんが、シマリハで考え方を学び、応用できるようになったと思います。

作業療法士を目指している方にメッセージをお願いします。

実は、高校生の頃の私は看護師を目指していたんです。たまたま作業療法士の仕事を目にする機会があり、患者さんがやりたい作業をリハビリにするって面白そうだなと思い、進路を変更しました。病院の作業療法士は、退院後の生活も想像しながらリハビリを考えます。その方が好きなこと……例えば料理や畑仕事といった、生きがいとなっている作業をこの先も続けられるようにリハビリを行うと意欲が生まれます。退院までの期間が限られているなかで患者さんのことを想い、その方に合うリハビリを考えていけるような、探究心のある人に向いている職業だと思いますよ。

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