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島根大学医学部附属病院(訪問看護ステーション ほほえみ)理学療法士

伊藤 知華 さん

Profile
島根県大田市出身、本学2013年度卒。広島県の急性期病院にて経験を積んだ後、Uターン。 現在は、「島根大学医学部附属病院」に勤務し、急性期でのリハビリテーションを担当するかたわら、「訪問看護ステーション ほほえみ」にて訪問リハビリテーションにも携わっている。

現在のお仕事内容について教えてください。

現在、急性期の病院に勤務し、病気を発症して間もない方をはじめ、神経難病の方や小児疾患の方などたくさんの方と関わらせていただいています。
仕事内容は患者さんに対するリハビリ業務が主ですが、カンファレンス(※)や回診に参加することもあります。また、「島根JRAT」という団体に所属し、大規模災害発生時には地域の皆様が自立生活の再建・復興を目指していけるように、平時から大規模災害に備えて、リハビリテーション支援を提供するための制度や体制確立を目的とした活動を行っています。
その他、月に2~3回、出雲市にある「訪問看護ステーションほほえみ」に勤務しており、自宅や施設で療養されている方のご自宅や入所施設に伺い、元の生活に復帰するためのお手伝いや現在の生活がより送りやすくなるように環境調整などを行う訪問リハビリにも携わっています。

(※)カンファレンス…医師や看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などさまざまな職種のスタッフが1つのチームをつくり、治療の指針について話し合うことを目的とした会議。

島根大学医学部附属病院を選んだきっかけは何ですか?

在学中に、島根大学医学部附属病院で長期臨床実習をさせていただいたことがきっかけです。実習中、リハビリテーション部の先生方の、患者さんはもちろん、ご家族や地域の方に対しての向き合い方を見て、温かい職業だと感じました。そして、先生方のような関わりができる理学療法士になりたいと思いました。
また、地域や行政、スポーツ分野など業務外で様々な分野で活動される先生方も多く、私もこの職場で様々なことに挑戦しながら学べたら、今後自分が関わる相手のお役にたてることが少しでも増えるのではないかと思いました。

実際に、急性期病院外の様々な分野でも活動されていますが、なぜ訪問リハビリテーションに携わろうと思ったのですか?

 訪問看護ステーションに勤務する動機として、「患者さんの退院後の生活をより深く理解し、急性期でのリハビリに少しでも活かしたい」という想いがありました。実際に、ご自宅や施設に訪問し、リハビリを行うことで、患者さんの生活動作面での困りごとをはじめ、環境面での問題点、また、お伝えした自主訓練などが適切に自宅で行えているか、ご家族に患者さんに対してお困りのことはないかなど、様々なことが見えてきます。

活動されている災害リハビリテーションとはどんなものですか?

災害時や平時から発災時の準備のための活動をする災害リハビリテーション支援チーム「JRAT」は、2011年の東日本大震災を契機に発足した組織で、全国で地域JRATとして活動しています。
災害時に被災者・要配慮者等の生活不活発や災害関連死を防ぐために、リハビリテーション医学・医療視点から関連専門職が組織的に支援を展開し、被災者や要配慮者などの早期自立生活の再建・復興を目指す活動を行なっています。災害は発生しないことが一番ですが、発災に備え平時から他団体と連携し、災害時に適切な支援が行えるよう体制を構築しています。

急性期病院での仕事上の苦労や、やりがいを教えてください。

仕事上の苦労というのかは分かりませんが、患者さんの症状は個々で異なり、同じ疾患でも初めて見る症状も日々たくさんあります。また、急性期の病院ですので病気を発症されたばかりの方も多く、気持ちが落ち込んだり、意欲が向かない方もおられます。患者さんが自分の思うようにならず悔しそうにされる姿を見た時や自分行なっていることの効果がなかなか出ない時は、無力さや情けなさを感じることもあります。そのような時は職場の同僚に相談し、様々な視点と気づきをもらうことで、患者さんや自分の行なっていることを見直すきっかけとしています。
苦しい状況を、患者さんと一緒に乗り越えられた時は、本当に達成感があります。 同時に、患者さんと目標を共有し、院内の関係者や在宅スタッフの方、地域の方々と協働して患者さんの人生の大切な一部に携わらせていただけることにもやりがいを感じます。その他、地域に出向き、地域の方々に「病気を予防する」という点でも関われるということは理学療法士の魅力の一つかと思います。

地域との関わりもあるんですね。

「介護予防・健康増進」の観点から、多職種の専門職の協働の下で、高齢者個人に対する支援の充実と、それを支える社会基盤の整備を同時に進めていく地域包括ケアシステムの実現に向けて、市町村や地域包括支援センターが開催する「地域ケア会議」に出席することもあります。他には、介護予防教室といった高齢者が住み慣れた地域で、なるべく介護を必要とせずに暮らしていけるようにすることを目的とした介護予防活動などにも参加しています。
また、個人的には、今後、地域の中にある「患者会」に関わり、急性期や訪問リハで培った知識や経験をもとに、悩みを抱えているご本人や家族の方々のお役に立てることができればと考えています。

島根リハビリテーション学院で学んだことや奥出雲での学生生活など、印象に残っていることは何ですか?

まず、奥出雲での学生生活で印象に残っていることは、今までに経験したことのない雪の量が降るというのは言うまでもなく。。。学生同士が近くに住んでいることで、一緒に勉強ができたり、ご飯を食べたり、温泉に行ったりと近い環境で相談などもし合えたことが学校生活を頑張れる源や支えになっていたと感じます。
また、先生方一人一人が本当に親身になって関わってくださること、相談がしやすい距離感・環境であることが、積極的に学びに向かえた要因だと思います。

理学療法士に興味関心のある高校生へのメッセージをお願いします。

理学療法士という仕事は、私が高校生の頃は正直聞いたことも関わったこともない職業でしたが、高校の担任の先生に勧められて理学療法士という職業について調べました。理学療法士について紹介してあるどのパンフレットやHPを見ても、理学療法士の隣にはいつもリハビリを受けている相手がおられ、それは高齢者の方や子供の方、学生の方やスポーツ選手などいろいろな立場の方がいらっしゃいました。近い場所から人生の様々な場面のお役に立てる仕事なのかなと感じました。
実際働いてみて、たくさんの方と関わり、笑い合ったり一緒に悩んだり、時には一緒に涙を流すこともあります。そこには、やるせ無さや、無力感を感じることもありますが、日々達成感や面白さ、やりがいを感じることもできます。また、理学療法士という職業をオープンキャンパスや病院見学などで一度実際に目にしてもらえると、今後の参考になるかと思います。

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